Mobile Legends: Bang Bang(モバイル・レジェンド:バンバン、以下MLBB)は、中国のゲーム開発会社Moonton(ムーントン)が開発したモバイル向けのマルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)ゲームです。2016年7月にリリースされて以来、特に東南アジア(インドネシア、フィリピンなど)を中心に爆発的な人気を博しています。
リリースと初期の成長
MLBBは、iOSとAndroid向けに2016年11月にリリースされました。リリース当初は中国市場をターゲットにしていましたが、すぐに東南アジア諸国でダウンロード数を伸ばし始めます。2017年末までには、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなどの国々で人気トップのモバイルゲームとなりました。
ゲームの特徴は、PCで人気のMOBAゲームの要素をモバイル向けに最適化した点にあります。操作性を簡略化しつつ、5対5の白熱したバトルを短時間で楽しめるようにデザインされています。また、東南アジアの文化や神話をモチーフにしたヒーローやスキンも人気の理由の1つです。
ライアットゲームズとの訴訟
MLBBの急成長は、ライアットゲームズの注目を集めることになります。2017年7月、ライアットはMoontonを相手取り、著作権侵害を理由に訴訟を起こしました。ライアットは、MLBBがライアットの『リーグ・オブ・レジェンド』の知的財産を不正に使用していると主張したのです。
訴訟は2年近く続きましたが、2019年5月に和解が成立。Moontonは一定の賠償金を支払うことで合意しました。この訴訟は、MLBBの勢いを一時的に削ぐことになりましたが、ゲーム自体の人気は衰えることはありませんでした。
eスポーツシーンの発展
2018年以降、MLBBはeスポーツタイトルとしても注目を集めるようになります。Moontonは大規模な公式大会「Mobile Legends: Bang Bang Professional League(MPL)」の開催を開始。東南アジア各国で予選を行い、その勝者を集めた国際大会も実施されました。
MLBBのeスポーツシーンは、東南アジア地域に留まらず、徐々に世界各地に拡大。2021年には、ロシア、トルコ、ブラジル、アメリカなどでも公式リーグが設立されています。大会の賞金総額も年々増加しており、優勝チームには数十万ドルが贈られるようになりました。
世界選手権「M World Championship」の開催
MLBBの最大の国際大会が、「Mobile Legends: Bang Bang World Championship(M World Championship、略称M)」です。Mは2019年から毎年開催されており、MLBBの世界一を決める大会として位置づけられています。
第1回大会「M1」は2019年11月にマレーシアのクアラルンプールで開催され、16チームが出場。決勝戦はインドネシアの強豪EVOS LegendsとRRQ(Rex Regum Qeon)の対戦となり、EVOS Legendsが初代世界王者に輝きました。
2021年1月の「M2」はシンガポールで開催。新型コロナウイルスの影響で無観客となりましたが、フィリピンのBren Esportsがミャンマーのチームを下し優勝しました。
同年12月の「M3」も引き続きシンガポールで開催。フィリピンのBlacklist Internationalが地元シンガポールのチームを4-0で下し、2年連続のフィリピン勢優勝となりました。
2023年1月の「M4」は初のインドネシア開催。フィリピンのECHOが前回王者のBlacklist Internationalを下し、フィリピン勢3連覇を達成しました。
そして2023年12月、「M5」が初めてフィリピンで開催されました。地元のAP Brenが接戦の末にインドネシアのONIC Esportsを下し、大会2勝目を挙げました。AP BrenはKarl “KarlTzy” Nepomuceno選手の加入で大きく力をつけ、地元開催を最高の形で締めくくりました。
次回「M6」の開催地はマレーシアに決定しており、MLBBの発祥の地に世界選手権が帰ってくることになります。
ヒーロー数の増加
MLBBのリリース当初のヒーロー数は30体ほどでしたが、その後も定期的に新ヒーローが追加され続けています。 2023年3月時点では、ヒーロー数は120体を超えています。
Moontonは、ゲームのバランスを保ちつつ、新しいヒーローを導入することで、プレイヤーの興味を引き付け、ゲームの多様性を維持しています。
新ヒーローは、東南アジアの文化や神話、伝説などからインスピレーションを得たデザインが多く、プレイヤーの関心を集めています。 また、新ヒーローの追加によって、チームの編成やバトルの戦略に変化が生まれ、ゲームの奥行きが増しています。
以下は、MLBBのヒーロー数の推移を簡単にまとめたものです。
- 2016年11月(リリース時):約30体
- 2018年末:約60体
- 2020年末:約100体
- 2024年3月現在:120体以上
このように、MLBBはリリース当初から4倍以上のヒーローを追加し、ゲームの多様性と戦略性を高めてきました。今後も新ヒーローの登場が予定されており、プレイヤーの期待を集めています。
現在の状況と今後
MLBBの全世界でのダウンロード数は10億回を突破しています。東南アジアのモバイルゲーム市場では、収益の28%がMOBAジャンルであり、その中心はMLBBが担っています。
今後もMoontonは、新ヒーローの追加やゲームバランスの調整を継続的に行っていく予定です。 eスポーツシーンのさらなる拡大も期待されます。各国のリーグ戦は、世界大会出場を懸けた熱戦が繰り広げられるでしょう。
MLBBは、リリースから7年が経過した現在も成長を続けています。シンプルながら奥深いゲーム性と、eスポーツを通じたコミュニティの広がりが、その人気を支えているのです。モバイルゲーム市場とeスポーツ業界の両面で、MLBBは今後も存在感を示し続けるでしょう。
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